●日本学術振興会/科学研究費助成
まず「書写・書道」における「文字を書くこと」をテーマにした研究に着手(スタート支援/2013-2015、挑戦的萌芽/2011-2012)し、その成果を生かして「国語力育成」に関する研究へと発展させ(基盤C/2016-2019)、現在は「グローバル社会における国語力育成のための『手書き』を生かしたICT教材の検討」を継続中です。
≪日本学術振興会≫
・研究活動スタート支援
課題番号:23830031
期間:2011-2012
「日常に生きる書写指導確立のための基礎研究―字形損傷要因の分析を通して―」
・挑戦的萌芽研究
課題番号:25590264
期間:2013-2015
日常に生きる書写指導確立のための「書く過程」に着目した効果的な教材開発」
・基盤研究C
課題番号:25590264
期間:2016-2019
「ICTを活用した国語力育成のための『手書き』強化の教材開発」
・基盤研究C
課題番号:23830031
期間:2019-2022
「グローバル社会における国語力育成のための『手書き』を生かしたICT教材の検討」
【研究概要】
杉﨑はこれまで、「文字を手書きすること」の意義と可能性を論じ(杉﨑2013)、効果的な「手書き」が、読書離れや書字への苦手意識等の課題解決に結び付き、「作文」だけでなく、「話し言葉」を喚起し「読み」を深めることを確認している(杉﨑2014、杉﨑・末永・入江2015)。その後も「手書き」を適宜取り入れ、子どもの主体性や論理的思考力を育む実践を継続 (杉﨑・伴野2016、杉﨑・荻野・伴野2017)し、更に手書きの負担を軽減しつつ筆圧の適正化を図る書字支援を追究した(杉﨑2017)。また、教員の手書きの「板書」に着目し、学びの道筋の「板書」が、「夢中になる授業」の実現につながることを確認した(杉﨑・幾田・田上・川口2017)。
「書き替え」の具体を探って「紙芝居を作る」「日記を書く」等の実践が提案されているが、杉﨑は、特に「書き替え」の体系化のスタート地点の「視写」や「書き込み」等に着目し、「読む・話す・聞く」時点での「手書き」が評価を可能にし、それぞれの力の定着に繋がると考えている(杉﨑・河野2018)。
「手書き」は点画を組み合わせる過程で次の言葉を紡ぐが、パソコン入力は語句の変換によって紡ぐ意識や思考が中断される。そのため、質の高いディープ・アクティブラーニングの実現には、「手書き」とICT、それぞれのメリット・デメリットを明確にして使い分ける必要がある。ところが教育現場では、不適切な書字体勢によって手指への負担が増し、児童が「文字を書くこと」に嫌悪感を持ったり、「交流」を重視して時間を要して「文字を書く」ことが行われなかったりしている。書字の負担を軽減する体勢を指導(杉﨑2019)し、児童自身が書き留めて残させなければ個々の学びの足跡を把握できず、授業者側の一方的な見方のリフレクションに留まる。また、個々の捉えを大事にしつつ全体で共有し確認しなければ、確かな学びには至らない。「書けなくても読めればいい」と諦念することの多い特別支援学校でも、「文字を書くこと」の意義が確認されている。
具体的には、「どんな時に・何を・何を使って・どのように書くと『手書き』の有意性が生かされ、国語力の育成につながるのか。」「書かなくてもよい、むしろ書かない方がよいのはどういう時か。」を明らかにするべく、研究中である。(書写書道に関して、プログラミングとの融合を考えたイベント「ひらめき★ときめきサイエンス」の実施を予定している。)
<一般書>
★『文字を書くのが苦手な子どものためのひらがなカタカナ・ラクラク支援ワーク』 明治図書 初版 H28.3 全127頁 重版7版
●日本学術振興会/科学研究費助成事業・研究成果公開
「ひらめき★ときめきサイエンス」実施のご案内
「書とプログラミング」
文字の造形や表現力が認知や身体の成長と深い関係にあること、特に「手書き」は、身近な情報ツールであり書き手の脳の活性化にも寄与することが明らかになっています。しかし、ICT化が進むみ人工知能までもが登場してきた今、いくら嘆いたところで、「手書き」の場面は減る一方で、「手書き」中心の社会に戻ることはないでしょう。そうなると、いかにICTを活用するかが重要になります。そこで、今回は「書表現」とプログラミングとを融合させた研究を紹介します。
●「ひらめき★ときめきサイエンス」中止(開催延期)について
…夏の実施を延期して以降、コロナ禍でもなんとか開催できないものかと考えて、精一杯、準備を進めてきました。しかし、このところの感染拡大の状況を踏まえ、今年度の実施を断念しました。目下、次年度の実施に向けて繰越の手続きをしているところです。 次年度に実施の際にはご参加いただきたく思います。